ブックタイトル広報なか 2016年12月号 No.143
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広報なか 2016年12月号 No.143
問い合わせ環境課環境グループ?298-1111(内線447~449)◆「2℃目標」の意味~IPCC第5次評価報告書より~世界の平均気温は、産業革命以降、約0.85℃上昇しており、この気温上昇は現在も続いています。この気温上昇を、今世紀末までに2℃未満に抑えようというのが「2℃目標」です。この目標は、2009年にデンマークのコペンハーゲンで開催された同第15回締結国会議(COP15)で初めて言及され、2010年にメキシコのカンクンで開催された同第16回締結国会議(COP16)で国際目標として合意されました。ここで「2℃目標」を設定する意味について説明しましょう。図は、今世紀末までの世界の平均気温の変化を予測したものです。出典は、IPCCの第5次評価報告書です。IPCCは、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された組織で、現在の参加国は195か国、事務局はスイスのジュネーブにあります。IPCCでは、人為起源による気候変動、影響、適応方策などに関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行い、報告書としてまとめています。第5次評価報告書は、世界中で発表された9,200以上の科学論文を参照し、800人を超える執筆者により、4年の歳月をかけて作成されました。何も温暖化防止対策が講じられず、世界がこのままの道を進み続ければ、地球の平均気温は今世紀末までに、最大で4.8℃上昇する可能性があると発表されました。報告書によれば、この場合、異常気象、海面上昇、作物収量への影響、生態系への悪影響、経済的な損害などあらゆる分野で地球温暖化の及ぼすリスクが高まります。一方、厳しい温暖化防止対策をとった場合には今世紀末までに気温上昇は2℃未満になります。このように、この目標設定は、気温上昇が2℃未満では、温暖化が及ぼすリスクはかなり高くなる分野はあるものの、最悪の影響は回避できるという認識に立っています。◆「2℃目標」を達成するために出典:IPCC AR5 WG1図SPM7パリ協定によって採択された、この世界が進むべき方向を示した「2℃目標」および、さらに厳しい「1.5℃目標」は、現在地球温暖化の影響が顕著となりつつある温暖化に脆弱な国・地域に希望を与えました。結論から言えば、この目標達成は不可能ではありませんが、相当難しいです。今世紀後半に、人間活動による温室効果ガス排出量を実質的にゼロにしなければならないのです。すでに述べたように、産業革命以降、世界の気温はすでに約0.85℃上昇しています。さらに、温室効果ガスの排出量増大が明日ストップしたとしても、温暖化は続き、気温はさらに0.5℃程度の上昇を続けます。今世紀末まで70年余り、残された上昇分は0.65℃しか残されていません。また、現在までに188か国が削減目標値を提出していますが、それらを累積しても、目標を達成できません。さらに、温暖化防止に消極的な国・地域や、温暖化防止対策を「まだ深刻な問題ではなく、その必要はない」とする人々が、世界にはまだたくさんいるということも温暖化防止対策を進めるうえで大きな障壁となることでしょう。すべての国・地域は、パリ協定を遵守し2℃目標の達成に向け、5年ごとの見直しでは、高いレベルの削減目標値を提出するとともに、思い切った国内対策を進める必要があります。対策が遅れれば遅れるほど、地球温暖化に歯止めをかけることは困難となり経済的損害も大きくなります。一方、私たち一人ひとりができることは小さいですが、かといって行動を起こさず、次世代に問題の先送りをすることのないようにしましょう。まずは、危機意識を持ってできるところから取り組むことが大切です。「ちりも積もれば山となる」ということわざもあるように、今後世界が一体となって、この歴史的国際合意の実現に向け、脱炭素社会をめざし、継続的に取り組みを強化し続けていきましょう。執筆:環境省環境カウンセラー勝井明憲5広報なか12月号