ブックタイトル広報みと 2016年11月1日号 No.1393
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広報みと 2016年11月1日号 No.1393
水戸市の人口人口…271,087人(男132,895人、女138,192人)世帯数…118,927世帯-平成28年10月1日現在(平成27年国勢調査速報値基準)-【編集】みとの魅力発信課?029・232・9107029・224・5188kouhou@city.mito.lg.jp広報みと平成28年11月1日号第1393号【発行】水戸市?029・224・1111(代表)〒310~8610水戸市中央1~4~1日本遺産ものがたり―近世日本の教育遺産群―1860年に来日したプロイセン(現在のドイツ)の外交官・オイレンブルクは、近世日本人の読書熱を次のように記している。「日本人はどんな身分の者でも読書欲があり、子どもや女性たちも熱心に読書にふけっている。本屋はいたる所にあり、本は(本国に比べ)信じられないほど安く、いかに多くの本が読まれているか分かるのである」江戸時代、身分や性別を超えて、多くの人が読み書きを習得した。その結果、人々は儒学の高度な解説から、日常生活の基礎知識に至るまで、さまざまな知識や情報を本によって得るようになった。ここに、来日外国人が驚くほどの読書文化が花開いたのである。こうした江戸の読書文化の殿堂ともいえる施設が、中世の名門学校・足利学校(栃木県足利市)である。江戸時代の足利学校は、学校としての機能はほとんど失われたが、その一方で、入手困難な中国の貴重書(漢かんせき籍)が多数所蔵されていることで有名であった。そのため、全国の学者が蔵書を読むため、足利学校を訪れたのである。現在、これらの漢籍は国宝に指定され、日本遺産構成文化財ともなっている。さて、江戸の読書文化を支えたのは、三都(京都・大坂・江戸)を中心とする民間出版社(書しょし肆)であった。特に水戸藩は、歴史書『大日本史』の編さんを藩政の主要事業に位置づけていたことから、藩直営の出版施設を持つだけでなく、民間出版社とも交流が深かった。江戸時代前期には、京都の柳りゅうしけん枝軒という有名な出版社が、大日本史編さん所である彰考館と提携し、水戸藩の学者が執筆した書物の出版・販売を一手に引受けていた。水戸発の家庭の医学ハンドブックとして著名な『救きゅうみんみょうやく民妙薬』も、ここ柳枝軒から出版された。『救民妙薬』は、多くの家に備えられ、江戸時代の人々の健康を支えたベストセラー本となった。江戸時代後期には三都だけでなく、地方にも出版社が誕生する。中でも水戸の咸かんしょうどう章堂や東とうへきろうすはらや壁楼須原屋は、彰考館や藩校・弘道館と提携し、全国展開した。特に徳川斉昭、会沢正せいしさい志斎、藤田東とうこ湖らの著作は人気が高く、刷るほどに売れたという。水戸藩の尊王攘夷思想が幕末維新期に大きな影響を与えたことは有名だが、その媒介となったのが、本と民間出版社であった。こうして江戸時代の読書文化は、当時の人々の知的水準を引上げる原動力となり、やがて来る明治維新の知的基盤となっていったのである。水戸市歴史文化財課関口慶久栄える読書文化第8話日本遺産に認定された「近世日本の教育遺産群―学ぶ心・礼節の本源―」の歴史的魅力を語る「日本遺産ものがたり」。今回のキーワードは「読書」です。日本遺産構成文化財国宝漢籍(栃木県足利市)『救民妙薬』(市立博物館所蔵)