ブックタイトル茨城県霞ケ浦環境科学センター年報 第10号2014(平成26年度)

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概要

茨城県霞ケ浦環境科学センター年報 第10号2014(平成26年度)

Ⅵ研究報告・調査報告1-1霞ヶ浦における光環境の変化とその特徴中村剛也The Changes and Characteristics of Light Enviormant in Lake Kasumigaura (Nishiura).Koya NAKAMURAキーワード:西浦,光環境,鉛直消散係数1はじめに湖沼生態系の基礎となる植物プランクトンの一次生産には,水中の光合成に有効な光が,重要である。水中に入射する光は,水自身の他に,有色の溶存物質や水中に浮遊する植物プランクトン,無機態の懸濁物質による吸収や散乱により,深度に伴って減衰する1)が,湖沼における光の減衰は,主に,植物プランクトンによる影響が大きく,非生物な成分による減衰は大きく変化することなく,バックグラウンドとして働いていると考えられている2, 3)。水中の光環境を表す指標として,透明度があり,野内・外岡4)は,霞ヶ浦の透明度が1993年以前と1993年以降で,季節的な変遷などの特徴が大きく変化することを示し,その要因として,透明度を決定する要因が植物プランクトンから別の成分に変化したためであることを示した。また,霞ヶ浦では,1998年9月から10月に湖水が白く濁り,透明度が著しく低下する白濁現象が発生した5),6)。この現象の原因物質は,無機態の鉱物結晶であることが示されている6-8)。この様に,霞ヶ浦の光環境は激しく変化しており,光の減衰に影響する成分も大きく変化したことが考えられる。本研究は,霞ヶ浦における光環境の変化を明らかにするため,水中入射光を減衰する成分を有機態懸濁物(POM),無機態懸濁物(トリプトン),有色溶存物質+水自身に分け,それぞれの成分の寄与率を評価した。2方法本研究では,国立環境研究所が公開している霞ヶ浦データベース9)から1978年から2011年3月までの霞ヶ浦(西浦)湖心(36°02.142'N, 140°24.222'E)のデータを用いて,光環境の指標である鉛直消散係数(K d)に対するPOM,トリプトン,有色溶存物質+水自身の寄与率の経年変化を算出した。なお,本研究では,年平均を3月から翌年の2月までの平均値とした。2.1表層の鉛直消散係数(K dS)の算出水中に入射した光は式1で示されるLambert-Beerの法則で指数的に減衰する1)。・・・・式1I Z :深度Zmにおける光量子量, I 0’:水中に入射した水面直下の光量子量, K d :鉛直消散係数.国立環境研究所が公開している水質データ9)は,水面から深度2 mまでの柱状カラムサンプラーで採取された湖水の値である。そこで,鉛直消散係数も深度0 mから2 mで算出した。表層の鉛直消散係数K dSは,0 mから2 mで測定された7点の光量子量の自然対数値と深度で直線近似し,その傾きを求めることで得た。2.2 POM・トリプトンの濃度の算出SSは,POMとトリプトンによって構成されている。しかしながら,霞ヶ浦データベース9)に掲載されていたのはSS濃度のみであった。そこで,霞ヶ浦データベース9)に公開されている懸濁有機窒素(PON)のデータと植物プランクトンの乾燥重量に対するNの含有率6.3% 10)を用いて,式2と式3でPOM濃度とトリプトン濃度を算出した。POM (mg L ) =) ・・・・式2Tripton (mg L ) = SS(mg L ) ? POM(mg L )・・・・式3霞ヶ浦データベース9)に公開されているSSは,GF/F濾紙(孔径0.7μm; Whatman)に捕捉された38茨城県霞ケ浦環境科学センター年報,No.10 2014