ブックタイトル茨城県近代美術館/美術館だより No.102

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概要

茨城県近代美術館/美術館だより No.102

事業レポート茨城県近代美術館特別ゲストによるギャラリートーク茨城県天心記念五浦美術館映画「妖怪大戦争」撮影ジオラマコーナーの特別展示について美術家の横尾忠則さんをお招きし、6月12日、「丸沼芸術の森所蔵ベン・シャーン展関連イベント特別ゲストによるギャラリートーク」を開催しました。平日にもかかわらず、日頃から美術館のイベントを楽しみにしてくださる皆様をはじめとし、横尾さんの熱烈なファンの皆様、美術を学ぶ学生さんなど、多くの方々がご参加くださいました。本イベントは、ベン・シャーンも取り組んだ多様なグラフィックアートの世界について、その第一線で活躍される横尾忠則さんの視点からお話をうかがうことをねらいとしていました。展示室でのトークでは、ベン・シャーンが早い時期に自己のスタイルを確立している点に着目されました。「メディアを通し政治的・社会的なメッセージを発信し続ける大衆アートの視点では、早期のスタイル確立は幸せであると思える。一方、スタイルを獲得しては壊しの実験・模索を繰り返して自己を見つめるような純粋アートの視点では、スタイルを自ら壊せない状況は不幸せであるとも思える。どう感じているかは本人に聞いてみないと…。」と、会場の雰囲気を和ませつつ、様々な角度からアートを考えるきっかけをくださいました。また、ギャラリートークの最後には、「肉体の老化はもうお任せするとしても、考えは、どんどん生まれ変わるように、新しく。」とおっしゃる姿に、老若男女たくさんのお客様が頷かれ、共感されたご様子でした。会場を講堂へ移し、幼少時に描いた宮本武蔵の挿絵模写をはじめとする、横尾さんご自身の作品についてもお話をうかがうことができました。何からインスピレーションを受け、何を表現しているのか、1つ1つのモチーフをとりあげて分かりやすい言葉で解説をいただき、じっくりと作品に向かう時間は、純粋にとても楽しい時間となりました。様々な質問に対しても率直かつ真摯にお答えいただき、そのお人柄に改めて惹きつけられた方も多数いらっしゃったことと思います。「異界へのいざない―妖怪大集合」展は江戸時代から現代に至る妖怪を描いた絵画により、その多彩な表現の面白さや日本の妖怪文化を紹介したものですが、これとは別に今回特別展示として、2005年公開の角川映画「妖怪大戦争」の撮影ジオラマの一部を再現しました。この映画は妖怪が人間と助け合いながら悪霊たちと戦う妖怪ファンタジー映画として当時大ヒットしましたが、このジオラマ展示を通して、現代における妖怪が絵画だけでなくアニメや映画など、様々なメディアを通して広く親しまれているという現象の一例を紹介しました。開催中は、再現された日本家屋に集まる妖怪たちのマスクなどのリアルな表情に驚き、興味津々に鑑賞する来館者の様子が見られました。また今回はここを妖怪たちとの撮影スポットとしても提供したところ、親子連れや若いカップルなどの多くの観客が思い思いに撮影を楽しむ当館人気の場所となりました。ところで、このコーナーが実現したきっかけは、昨年11月、水木しげる作品の出品交渉のため調布市の水木プロダクションを訪ね、その帰り際、社長さんから「近所に妖怪映画の撮影が行われたスタジオがある」という話を伺ったことでした。「妖怪大戦争」は、担当の私にとっても大変興味ある映画であったため、当時の資料が残っていれば何らかの形で紹介できるかもしれないと考え、急遽角川大映スタジオに立ち寄ったのです。事前連絡無しの訪問にもかかわらず、撮影所の方に快く対応していただき、そこで翌月の調布市のイベントで撮影に使われた妖怪の着ぐるみやマスクなどを展示するという情報を得ました。早速その調査を行い、館としての出品方針を決め、以来輸送展示、ディスプレイなどについて再三交渉を重ねました。今回の展示はそうした角川大映スタジオのご協力によって実現できたのです。壇上の横尾氏ギャラリートークの様子5