ブックタイトル広報かさま 2015年8月号 vol.113

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概要

広報かさま 2015年8月号 vol.113

先日、「動機づけ面接法」の講習会に参加しました。動機づけ面接とは、行動を変化させることで健康が改善されうる患者さんに対する支援法です。開発当初はアルコールや薬物などの依存症を対象にしていましたが、現在は高血圧、糖尿病、肥満、服薬管理など幅広い問題を対象としています。「変わること」と「変わらないこと」の利益と不利益の間で葛藤する両価性は、依存症独特のものではなく人間の本質です。抵抗のない人も動機のない人もいないのであり、その間で揺れ動くものなのです。患者さんの不適切な健康行動を知ると、われわれ医療従事者はそれを変えようと反射的に説得します。しかし強制や命令をされて動機が増すことはなく、逆説的に抵抗が引き出されます。「人は自分自身の言葉を聞いて、それを信じる傾向がある」のですが、医療従事者は望ましいセリフを患者さんから奪っているのです。動機づけ面接法では、患者さんの抵抗と動機に注目します。抵抗を表す言葉(「変わりたくない」「できない」「必要がない」など)には、正したい気持ちを抑制し容認します。その一方で動機を表す言葉(「変わりたい」「できそう」「必要がある」など)があれば、意識的に聞き返したり背景にある価値観を聞き出したりします。最後に要約する際には、抵抗がある一方動機もあることを明示します。これらの手法は、「雑草も生えている草原の中からきれいな花を選んで摘み、花束に仕立てて贈る」ことに例えられます。患者さんはすでに答えを持っているのであり、それを見つける案内をすればよいのです。短い診察中に患者さんの動機を引き出すのは大変ですが、患者さんの行動を変えるのには有用です。医療従事者でなくても子育てや共同作業をする相手に協力を求める際には、参考になるのではないでしょうか。両価性を意識した動機づけ―「抵抗」を認めながら、「動機」の花束を贈る―笠間市立病院石いしつか塚恒つね夫お笠間の歴史探訪25大田町の唯ゆいしんじ信寺境内に、学童疎開関係者来訪記念の標柱と記念植樹のコウヤマキがあります。太平洋戦争末期の昭和十九年(一九四四)六月、政府は都市の学童を地方へ一時的に移住させる「学童疎開促進要綱」および「帝都学童集団疎開実施要領」を決定しました。集団疎開は各地に割り当てられ、当地方では笠間の旅館、稲田の旅館や寺院、宍戸や岩間の寺院が宿泊場所になりました。宍戸には同年七月、向島区(現墨田区)第一寺島国民学校の三年生から六年生計一二三人と教職員が、二つの寺に分宿することになりました。唯信寺に七七人、養ようふくじ福寺に四六人で、引率の先生や寮母が児童の教育や世話に当たりました。唯信寺に疎開体験のある一人は、次のように回想しています。お寺に到着したその晩の食事は、大きなおむすびが二個でした。古いお寺の大きな本堂で寝床に落ち着きますと、天井ばかりが高くて妙な気持に襲われ親が恋しくなり始めました。お寺から少し離れた所を、私たちを東京から運んだ汽車が走っていました。時々通り過ぎるその音を耳にすると、今朝出てきたばかりの東京の家が思い出され、郷愁はつのるばかりでした。疎開している児童は、宍戸国民学校へ午後通い授業を受けました。空襲は、大都市から地方へと拡大し、宍戸にも頻繁に空襲警報が発令されるようになりました。昭和二十年(一九四五)二月十七日早朝の空襲により、宿泊していた唯信寺の本堂が全焼。児童は、北山に避難して全員無事でした。その日の夜から、近くの円えんつうじ通寺に移りました。その後も空襲が続いたため、同年五月に秋田県へ再疎開し終戦を迎えました。平成三年(一九九一)二月、学童疎開を体験した方々が旧友部町役場を訪問、かつての学び舎宍戸小学校で「母の懐ふとこ宍ろ戸ふるさと賞」を授与されました。その後、三つの寺を訪れて寺の方々と再会し、各々の寺に記念植樹をしました。そして、訪問を機に、「一いちてら寺宍戸会」が発足しました。学童疎開の証となった記念樹は、世の中の平和と明るい生活が続くことを願って、伸び続けています。(市史研究員幾いくうら浦忠ただ男お)学童疎開を伝える標柱と記念植樹のコウヤマキ標柱と記念樹(唯信寺)市立病院の医療コラム46平成27年広報かさま8月号(vol.113)17