ブックタイトル茨城県霞ケ浦環境科学センター年報 第9号2013(平成25年度)

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概要

茨城県霞ケ浦環境科学センター年報 第9号2013(平成25年度)

Ⅵ研究報告・調査報告考えられる。11河川のBOD値とSS濃度の相関を見ると,0.01~0.85の範囲で,8河川では0.4以下で強い相関は認められなかった。BOD値とSS濃度の相関の大きかった3河川の1つに新川の0.85があるが,これは,24年8月の値があまりにも大きく,そのデータに強く影響されているためと考えられる。残りの2河川は,園部川の0.74と流川の0.62で,SSは有機質に富むことが推察された。この2河川の有機物の指標と考えられるCODについて,流域からの排出負荷割合をみると,園部川は畜産系が約48%,流川は生活排水と市街地等の面源でほとんどを占め(生活排水が約38%,市街地等の面源が約60%)ており,農地に散布された堆肥や道路側溝等に蓄積していた汚濁物質が降雨により濁質とともに洗い流された可能性が考えられる。また,降雨による影響以外の要因として,これらの河川の河川長は,新利根川の約33km,園部川の16kmを除くと10km以下の短い河川が多く,流域からの負荷された汚濁物質が沈降や分解される前に河口域まで達していることが想定され,各汚濁排出源で十分処理しなければ河川水質を良好に保つことができないと考えられる。3.7未処理雑排水の影響工場・事業場などの点原の排出源では法律や条例により事業種や排出水量等に応じた規制がかけられている。そのため,排出水の水質は,良好に保たれている。一方,生活排水については,図1に示したように下水道や農業集落排水処理施設,合併処理浄化槽等で処理される割合は約80%で,残り20%については,未処理で環境中へ放流されている。BODの平均値が2 mg/Lを超過した11河川について,未処理雑排水の負荷量等を見てみると,表3のようになる。表3は湖沼水質保全計画策定時資料6),7)を基に作表したもので,CODで有機性汚濁を評価したものである。平成12年度に比べ平成22年度の未処理雑排水の負荷量は,園部川と流川で削減率が大きいが,花室川では逆に増加しており,他の河川では若干の減少しているのが分かる。全体の有機性汚濁負荷に対する未処理雑排水の占める割合の11河川の平均は,平成12年度が31.2%で,平成22年度が29%と大きい変化は見られず,全体の負荷の低減率と同程度で推移していることが推察される。しかしながら,未処理雑排水の負荷割合は,多くの河川で30%超が見受けられ,特に新川においては50.8%と半分を超過しており,これらの河川では未処理雑排水が河川水質に与える影響は大きいものと考えられる。生活排水の処理が進まない理由として,自分達の排水がどのように処理されているのか正確に認識できていないこと10)が挙げられる。彼らの意識を変えるためには,戸別訪問により各種の施策や水質の状況等を理解してもらう等の方策を検討する必要がある。表3河川の有機性汚濁に係る未処理雑排水の負荷量とその割合未処理雑排水の負荷量(kg/日)排出負荷に対する未処理雑排水の負荷割合(%)河川名H12年度H22年度H12年度H22年度新川111.1 105.2 47.5 50.8新利根川633.8 584.2 31.0 32.2備前川49.6 46.3 35.2 35.1境川50.6 46.3 13.4 14.9山王川122.5 96.8 37.3 35.1花室川142.3 184.1 23.6 32.4清明川84.4 82.9 22.6 29.4園部川288.9 185.9 25.0 13.3流川29.3 14.1 44.7 25.7鉾田川154.1 121.6 21.0 17.3前川90.7 79.2 42.2 33.14まとめ茨城県内の河川のBOD環境基準の達成状況について概観したところ,以下のことが明らかとなった。・BODに係る環境基準達成率の低い水域は霞ヶ浦,北浦及び常陸利根川水域であった。・上記水域の河川で,BODの汚濁が進んだ河川として,清明川,園部川,花室川,山王川,境川,備前川,新利根川,新川,鉾田川,流川及び前川の11河川があげられる。・上記11河川について,平成12年度と平成22年度を比較すると,流域からの有機性汚濁の総負荷量が増加した河川は,恋瀬川,園部川,梶無川の3河川のみで,他の河川は減少していることから,BODを上昇させる要因が他にもあると考えられた。・11河川は,河川長が10 km以下の小河川が多く,自浄作用を十分に発揮できていないと考えられる。そのことは,濁質等の流入と考えら茨城県霞ケ浦環境科学センター年報,No9,2013 83