ブックタイトル茨城県霞ケ浦環境科学センター年報 第9号2013(平成25年度)
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茨城県霞ケ浦環境科学センター年報 第9号2013(平成25年度)
Ⅵ研究報告・調査報告土壌炭素含有率が低いため脱窒活性は土壌炭素含有率が低い地点の方が土壌炭素含有率との依存性が強いことが考えられる。以上のことから,本調査における単相関解析では,全地点で共通して高い相関が認められた項目はなかったが,脱窒活性は各地点で枯渇している項目との相関係数が高い傾向が認められた。このことから,脱窒活性の向上には,大きい影響要因と考えられるもの1つを供給するよりも,影響要因すべてが枯渇しないことのほうが重要であると考えられる。しかし単相関解析の結果は,あくまで因果関係が存在する可能性を示したにすぎない。したがって今後検証の調査や,理論的検討が必要であると考えられる。4まとめ本研究では湛水条件の異なる地点における土壌の脱窒活性の変化とその影響要因の検討を行った。本調査の結果から,脱窒活性の向上要因と考えられる環境要因は,土壌直上水のNO3-N濃度,有機物量,土壌間隙水のNH4-Nからの硝化→脱窒の経路であると考えられる。有機物量に関しては,土壌直上水・間隙水のTOC濃度・土壌炭素含有率と複合的に影響されると考えられるため,どの項目が優先的に影響因子として働くかは今回の調査からは判断できなかった。また,砂質土,酸化状態,有機物の枯渇が脱窒活性の制限要因として働くことが可能性として示唆された。以上のことから,土壌直上水のNO3-N濃度,もしくは土壌間隙水のNH4-N濃度が高い地点で有機物量を確保し,緩やかに湛水する水田のような条件を作ることが最も脱窒に適していると考えられる。今後の課題として,水深や流速,Eh,粒度解析等の計測項目を増やし,より詳細に湛水条件や酸化状態,粒度と脱窒活性の関連について検討することがあげられる。また,土壌直上水のNO 3 -N濃度が低い場合には,土壌間隙水のNH 4 -N濃度からの硝化→脱窒のプロセスによる脱窒活性向上の可能性が単相関分析の結果から示唆された。特にO 2の影響を受けやすい環境条件下では脱窒反応だけではなく,硝化反応との関連も考慮しなければならないと考えられる。5参考文献1)戸田任重,日高伸(1996):高濃度硝酸態窒素含有地下水の流入する水田下層土における脱窒活性,水環境学会誌,19,2,170-1752)駒田充生,竹内誠(1999):土壌を含む気液平衡系における亜酸化窒素溶解度,日本土壌肥料学雑誌,70,6,804-8073)公文富士夫,田原敬冶,山本雅道(2004):信州,木崎湖における最近の堆積物の年代と堆積速度,信州大学山地水環境教育研究センター研究報告,3,77-844)田渕俊雄,(2006):水田窒素除去機能の定量化への試み,農業土木学会誌,74,8,703-7065)上田真吾,小倉紀雄(1989):手賀沼における脱窒活性と沼の浄化に果たす役割,日本陸水学会誌,50,1,15-24茨城県霞ケ浦環境科学センター年報,No9,2013 77