ブックタイトル茨城県霞ケ浦環境科学センター年報 第9号2013(平成25年度)
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茨城県霞ケ浦環境科学センター年報 第9号2013(平成25年度)
Ⅵ研究報告・調査報告であり,Bosmina sp.には捕食出来ないサイズであったのかもしれない。また,藍藻類のAphanocapsasp.は群体が寒天質の粘膜に覆われており,捕食されても消化されなかった可能性なども考えられる。透明度はChl-aが低下したにも関わらず上昇せず,逆に低下した。これは同期間のSSが増加傾向であったことから,植物プランクトン以外の懸濁物質(例えば土砂等の無機懸濁物質)が増加して透明度を低下させたと推測されるが,その原因物質は不明である。2回目は6月28日~7月10日のChl-aの急上昇と,それに続く急低下期間である。50μg・L -1前後で推移していたChl-aは,6月22日頃から上昇傾向に転じ,6月28日~7月3日に急上昇して110μg・L -1を超えた。しかし,その直後から7月10日にかけて急低下した。まず,急上昇期について考察する。この期間に増加した植物プランクトンは珪藻類であり,そのうちThalassiosira sp.の増加が最も影響したものと推測される。一方で,同期間は動物プランクトンの生物量が少ない期間と一致していて,さらに,D.galeataが消えた時期と重なっている。D.galeataは霞ヶ浦において植物プランクトンに最も強い影響を与える動物プランクトンであると考えられており2),本種の減少は植物プランクトンを急増させる要因になると考えられる。なお,湖水1L中に存在した枝角類が,1日にろ過する量をみると,7月2日はD.galeataが1個体・L -1未満と著しく減少したことから,ほぼ0L・day -1になった。枝角類の他には小型の輪虫類が少量出現したのみであり,動物プランクトンは植物プランクトンの生物量にほとんど影響を与えていなかったものと推測される。さらに,6月13日~6月27日の降水量は調査期間中で最も多く,枯渇気味であったDINやD-Siなどの栄養塩が河川等を通して供給された可能性も考えられる。次に7月4日~7月10日の急低下期について考察する。この期間も動物プランクトンの出現量は増加していない。一方で,気象は大きく変化しており,植物プランクトン(特に珪藻類)の生育に影響を与えたのかもしれない。すなわち,1梅雨が明けたことで7月5日頃から水温が短期間で著しく上昇したことや,7月7日~7月14日頃まで風が弱く,湖水の混合が弱まった可能性があることなど,湖内の環境が激変したこと,2降水量は6月28日~7月9日の間に皆無であり,河川等からの湖内への栄養塩の供給が再び減少した可能性があることなどが可能性として考えられる。沖宿沖における月1回のモニタリングの結果,2012年にD.galeataが急増したことが確認された(未発表,北原式定量プランクトンネットによる鉛直曳き採集)。個体数密度は最大で2012年5月25日に178個体・L -1を記録した。また,その出現期間は2月~5月と長かった。今回の調査では5月22日に初めて出現が確認され,6月5日に30個体・L -1でピークを記録,7月2日まで10個体・L -1以下の低水準で推移(7月2日以降は1個体・L -1未満)した。採集方法が異なるので,単純に比較はできないが,2012年と比べて出現量は少なく,出現期間も短かったと推測される。同期間のChl-aは50μg・L -1程度で安定的に推移しており,餌環境が悪化していたようにはみえない。また,水温はDaphnia属の増殖を著しく抑制するとされる25℃14)より低く推移した。これら以外でD.galeataの出現量に強く影響を与える要因としては,捕食者の存在が考えられる。霞ヶ浦において枝角類を捕食する生物としては魚類やイサザアミ(Neomysis intermedia)15)があるが,特にイサザアミは,霞ヶ浦でDaphnia属が出現するようになった原因と考えられている。すなわち,1983年まではイサザアミは春と秋の年2回の増大期があり,枝角類は秋から春にかけて出現しなかったが,1983年からはイサザアミが個体数を増加させることにしばしば失敗することがあり,それがDaphnia属の増加を可能にしたとの報告がある2)。また,透明度の急上昇は必ずDaphnia属の出現を伴い,かつ,イサザアミの低密度域で起こっていたとの報告もある16)。これらのことから,近年の茨城県霞ケ浦環境科学センター年報,No9,2013 53