ブックタイトル茨城県霞ケ浦環境科学センター年報 第9号2013(平成25年度)
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茨城県霞ケ浦環境科学センター年報 第9号2013(平成25年度)
ろ過量(L・day -1)Ⅵ研究報告・調査報告0.80Bosmina sp.0.700.75L・day -1Daphnia galeata0.60Others0.500.400.300.200.100.003/28 4/4 4/10 4/18 4/25 5/2 5/8 5/15 5/22 5/31 6/5 6/13 6/18 6/25 7/2 7/9 7/17 7/24調査日Fig.9枝角類の推定ろ過量の推移4考察Chl-aは植物プランクトンの生物量と正の相関関係があり,かつ簡単な操作で測定可能なことから,指標値として広く用いられている。掛馬沖水質自動監視所の連続観測データから,Chl-aは本調査期間中に2回の特徴的な変化がみられた。1回目は5月2日~5月22日の低下期間である。この期間中はChl-aが50μg・L -1以下の期間が本調査期間中で最も長く,さらに,5月7日~5月16日は最も低い濃度の30μg・L -1台で推移した。同時期の植物プランクトンの細胞体積も珪藻類の減少により最小になったと見積もられた。また,細胞密度は小型の珪藻類であるStephanodiscus sp.の減少が著しかった。一方で,同じ珪藻類のAulacoseira sp.はあまり変化がみられず,藍藻類(Aphanocapsa sp.)や緑藻類(Pediastrum duplexやScenedesmus sp.)などは逆に細胞密度が増加した。同期間の動物プランクトンの乾燥重量は本調査期間中で最も増加したと見積もられており,特にChl-aが最も低下した5月7日~5月16日は,Bosmina sp.が急増した期間と一致している。湖水1L中に存在した枝角類が,1日にろ過する量をKnoechel et al.(1986) 12)による関係式(式1)により推定した(Fig.9)。F=11.695L 2.480・・・(式1)F:ろ過量(ml/day)L:体長(mm)5月2日~5月15日にかけて急激にろ過量が増加しており,5月15日には0.75L・day -1に達したと見積もられた。これは1日に湖水の75%がろ過されたことを意味する。この期間に出現した枝角類はBosmina sp.である。また,この期間の栄養塩は枯渇しておらず,気象や水温等にも大きな変化はみられないことから,Bosmina sp.による強い捕食圧によって,小型で捕食しやすい珪藻類(Stephanodiscus sp.)を減少させた可能性が示唆される。Burns(1968) 13)による枝角類の体長と捕食可能な粒子径の関係式(式2)にBosmina sp.の平均体長を当てはめた。y=22x+4.87・・・(式2)y:捕食可能最大サイズ(μm)x:体長(mm)最大で直径11μmまでの粒子が捕食可能な計算になる。別の湖沼ではあるが,霞ヶ浦の近傍に位置する牛久沼において,過去数年間に観測されたStephanodiscus属の直径は10μm前後であった(未発表)。今回の調査で出現した種が,牛久沼の種と類似したものかどうかは定かではないものの,捕食可能なサイズであった可能性はあるだろう。一方で,同じ珪藻類のAulacoseira sp.はあまり変化がなく,緑藻類のPediastrum duplexやScenedesmus sp.が増加した理由は,これらの種は群体を形成してサイズを増大させることが可能52茨城県霞ケ浦環境科学センター年報,No9,2013