ブックタイトル茨城県霞ケ浦環境科学センター年報 第9号2013(平成25年度)
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茨城県霞ケ浦環境科学センター年報 第9号2013(平成25年度)
Ⅵ研究報告・調査報告1-2霞ヶ浦における植物プランクトン由来溶存態有機物の挙動予測花町優次* ,中村剛也Prediction of the Dynamics of Dissolved Organic Matter Derived from Phytoplankton in Lake Kasumigaura, YujiHANAMACHI, Koya NAKAMURAキーワード:植物プランクトン,有機炭素,溶存態有機物,ボックスモデル1はじめに霞ケ浦においては,湖水中有機炭素の多くを溶存態有機炭素(Dissolved Organic Carbon; DOC)が占めている1)。従って霞ケ浦の有機汚濁を抑制するためには,DOCの供給源を明らかにし,各供給源の寄与率を正確に把握したうえで,個別の対策を講じることが必要である。DOCは,流域から河川等を通じて流入してくる外来性のもの,底泥から溶出してくるものに加え,湖内植物プランクトンに由来するものがあると考えられる。植物プランクトンは増殖によって懸濁態有機炭素(Particulate Organic Matter; POC)を生産するが,細胞外放出,リシスによってDOCも水中に供給する2)。供給されたDOCは,バクテリアなどの分解者によって無機化されるが,一部は分子改変によって難分解性(Refractory; R-)DOCになることも考えられる3)。植物プランクトン由来DOCが湖水中にどれだけ存在するかを把握するためには,植物プランクトンによる有機炭素の生産速度,生産された有機炭素の溶存化割合,溶存化した有機炭素の分解速度等を定量的に把握する必要がある。そのため筆者らは,霞ヶ浦から植物プランクト(1-a)bk 1L-POCR-DOCak 1bk 2(1-a)(1-b)k 1CO (1-b)k 22Fig. 1.有機炭素分解過程の概念図L-DOC*現所属:独立行政法人国立環境研究所環境計測研究センターン群集を採取してその光合成生産物を13 Cトレーサーで標識し,標識された生産物の分解過程を追跡する実験を,2010年8月から月に一回ずつ,一年を通して行なった4,5)。これまでの結果から,植物プランクトン生産物の分解過程は,Fig. 1に示したような競争・連続反応モデルで表現できることが明らかになった。この図において,L-POC・L-DOC;易分解性(Labile)POC・DOC,k 1 : L-POCの減少速度定数(/d),k 2 : L-DOCの減少速度定数(/d),a: L-POCからL-DOCへの変化割合(無次元0≦a≦1),b: L-POC・L-DOCからR-DOCへの変化割合(無次元0≦b≦1),である。このモデルにより,霞ヶ浦における植物プランクトン生産物について,k 1,k 2,a及びbの値を,現場に近い環境(有機炭素濃度・栄養塩濃度・バクテリア組成など)で把握することができた。この研究においては,13 Cトレーサーで生産物を標識する際には現場と同水温で培養したため,植物プランクトンの有機物生産速度については水温との関係を把握することができた。しかし,分解実験はすべて20°Cで行ったため,得られたk 1,k 2の値は20°Cでのものである。実際の湖内では,k 1やk 2の値は水温に影響を受け,変動すると考えられる。また,湖内有機物に対する植物プランクトン由来物の寄与を厳密に求めるためには,実際の霞ケ浦の湖水回転率も考慮する必要がある。そこで本研究では,実際の水温・湖水回転率の変動を考慮した,植物プランクトン由来有機物の湖内動態シミュレーションモデルを構築し,霞ケ浦における植物プランクトン由来DOCの寄与及び年間フラックスを明らかにした。2方法2.1湖内有機炭素動態シミュレーションモデルの構造本モデルでは西浦を1つの均質なboxとして扱40茨城県霞ケ浦環境科学センター年報,No9,2013