ブックタイトル茨城県霞ケ浦環境科学センター年報 第9号2013(平成25年度)

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概要

茨城県霞ケ浦環境科学センター年報 第9号2013(平成25年度)

Specific Growth Rate (day -1 )Ⅵ研究報告・調査報告0.80.70.60.50.40.30.20.10.010 15 20 25 30Fig.3 Pla. suspensa分離株および冬季ブルーム形成種Aphanizomenon flos-aquae 15)の水温・光環境に対する増殖速度の変化. a)本研究で得られたPla. suspensa分離株の増殖速度, b)Tsujimura et al.15)で報告されている冬季ブルーム形成種Aph.flos-aquaeの増殖速度.a) Planktothrix suspensa (This study)180 200μmols m -2 sec -130μmols m -2 sec -12μmols m -2 sec -1Temperature (℃)b) Aphanizomenon flos-aquae(Tsujimura et al., 2001)150μmol m -2 sec -150μmol m -2 sec -120μmol m -2 sec -1環境因子の増加にしたがって,増殖速度が概ね速くなる傾向が示された(Fig.3a)。一方で,20℃以下におけるPla. suspensaの増殖速度は,試験した範囲の光量子束密度系でほぼ同じ速度を示した。4考察4.1霞ヶ浦から分離した藍藻Planktothrixsuspensaの水温に対する増殖特性霞ヶ浦から分離したPla. suspensaの12℃から28℃における増殖は,光が十分な系(200μmolsm -2 sec -1)であると,16℃から24℃で増殖速度が上昇し,24℃以上で増殖速度が0.6 day -1程度で一定になる傾向であった(Fig.3a)。したがって,本研究の株は最適水温が24℃から28℃であると考えられる。Microcystisなどの一般的な藍藻ブルーム形成種は,高水温に適応している。Microcystisは30℃から35℃が最適水温であり,Anabaenaの最適水温は25℃である4, 5)。また,琵琶湖で冬季にアオコ現象を形成したAphanizomenon flos-aquaeは,23℃から29℃が最適水温であった15)。霞ヶ浦から分離したPla.suspensaは,Aph. flos-aquaeと同様に,アオコの原因となる藍藻の中では,最適水温が低く,低水温に適応していると考えられた。霞ヶ浦から分離したPla. suspensaの最大増殖速度は28℃であった。しかしながら,霞ヶ浦におけるPla. suspensaの増殖域は,野外環境では5℃から22℃であり,22℃以上では現存量が低下していた2)。本研究の結果は,28℃でも良好な増殖を示す可能性を示唆するものであり,野外の調査から得られた仮説と矛盾する。この矛盾は,最大増殖速度によって説明することが可能である。霞ヶ浦から分離した藍藻Pla. suspensaの最大増殖速度は0.65 day -1であった(Fig.3a)。鉾碕ら6)は,水温10℃から30℃(光量子束密度20μmols m -2sec -1で固定)におけるPla. agardihiiの最大増殖速度が1.12 day -1(30℃で確認)であることを示している。また,冬季においてもブルームを作ることで知られるAph. flos-aquae最大増殖速度は0.9day -1に達する(Fig.3b)15)。したがって,同属や同じような増殖特性を示す藍藻と比較した場合においても,霞ヶ浦から分離したPla. suspensaの増殖速度は,低いことが示唆された。そのため,22℃以上の現存量低下は,他種との競争による結果であると考えられる。4.2霞ヶ浦から分離した藍藻Planktothrixsuspensaの光環境に対する増殖特性Tsujimura et al. 15)のAph. flos-aquaeの増殖特性では,増殖速度が14℃未満で150μmols m -2 sec -1茨城県霞ケ浦環境科学センター年報,No9,2013 37