ブックタイトル桜川市勢要覧2014
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桜川市勢要覧2014
人の営みは常に水とともにありました。メソポタミアをはじめとする古代文明の多くが、大河の流域において発祥しているのは偶然ではありません。河川がもたらす豊かな恵みは、人間が農耕を基盤とした文化的な社会を築く上で、欠くことのできない要素といえるでしょう。桜川市を縦断するように流れ、市の名前の由来ともなった一級河川・桜川もまた、古来よりその流域の人々に生活の糧を与えるとともに、文化の源ともなってきました。この巻頭特集では、後世に語り伝えるべき文化遺産として、桜川を舞台に織り成されてきた歴史絵巻の数々をひもときます。鎌倉時代に制作された絵巻物上畳本三十六歌仙絵(重要文化財)に描かれた紀貫之像巻頭特集常よりも春辺になれば桜川波の花こそ間なくよすらめ紀貫之The Story of Sakuragawaものぼるそうです。これらの事実から、江戸の花見の名所づくりには、桜川の桜は欠かすことができない存在であったことがわかります。水戸黄門として有名な徳とく川がわ光みつ圀くにも、桜川の桜に魅せられた一人です。その惚れ込みようは、偕楽園前を流れる見み川かわ川がわのほとりに桜川の桜を移植し、その川を「桜川」と名付けてしまうほどでした。現代に蘇る幻の桜源郷明治に入ると、当市出身の俳人石いし倉くら翠すい葉ようや、日本植物学の創始者三みよしまなぶ好學博士による研究・出版活動により、再び脚光を浴びることとなった桜川は、大正13年に国の名勝指定を受けるにいたりました。昭和49年には、桜川の桜が国の天然記念物に指定されています。そして現在。画一的なソメイヨシノとは違い、一本ごとに色、形、匂い、開花時期までが異なる多彩な山桜が群生する桜川の景観は、その価値が広く見直されてきています。地元の人々の地道な保護や整備、広報活動の成果もあって、紀貫之も夢見た「幻の桜源郷」が、今また蘇りつつあるのです。ら、貫之が実際に当地を訪れたのではなく、人づてに話を聞き心を動かされて詠んだ歌だということがわかります。桜の名所としての「桜川」の評判が、遠く平安京にまで知れ渡っていたという事実に驚かされます。遥か千年の昔、春の桜川には、歌に詠まれたような光景が広がっていたのでしょうか。貫之がそうしたように、その有り様を想像してみるのも一興でしょう。江戸を彩る桜の供給地桜川の桜は古来、「西の吉野、東の桜川」と称され、その美しさを讃たたえられてきました。名勝・桜川のかつての威光を知る上で欠かせないのが、江戸時代における桜の供給地としてのエピソードの数々です。徳川三代将軍家いえ光みつが寛永年間に、四代将軍家いえ綱つなが正保年間に、桜川の桜を隅田川堤に移植させたのをはじめ、天文年間には八代将軍吉よし宗むねが、宝暦年間には九代将軍家いえ重しげが、多くの苗木を江戸の各所に移植させたと伝えられています。現在の皇居や、上野公園・飛鳥山公園・新宿御苑・小金井公園にあたる場所です。その数は推計でおよそ2万本に紀きの貫つら之ゆきも詠んだ桜川三十六歌仙のひとり紀貫之は、平安時代前期に活躍した歌人です。平仮名による最初期の文学作品『土佐日記』を著したほか、醍だい醐ご天皇の命により史上初の勅ちょく撰せん和わ歌か集しゅうである『古今和歌集』を編へん纂さんするなど、日本文学史において非常に重要な存在といえるでしょう。この貫之が、桜川について詠んだ歌が『古今和歌集』から40余年後に編まれた『後撰和歌集』に収録されています。「常よりも春辺になれば桜川波の花こそ間なくよすらめ」。現代語に訳すると、「春になると桜の花びらが川面をおおって流れていく。少しの間も空くことなく、壮観な眺めだ」といった意味になります。なんとも幻想的で、桜の儚はかない美しさに彩られた桃源郷のようなイメージを抱かされる名歌です。それにしてもなぜ、京の都で官職に就いていた貫之が、遠く常ひたちのくに陸国(現在の茨城県)に流れる桜川に材を取って、このような歌を詠むにいたったのでしょうか。この歌には「さくら河といふ所ありとききて」という詞書が付されています。このことか平安の古いにしえから現在へと流れる文化遺産The Story of Sakuragawaかつて平安の歌人から江戸の将軍までを魅了し、東国一の桜の名所とうたわれた桜川。その伝説とは。幻まぼろしの桜おう源げん郷きょうStory No.1Sakuragawa City Guide 20143 Sakuragawa City Guide 2014 2