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概要

茨城県博物館協会 NEWS No.39

「モテル」装置市川政憲(茨城県近代美術館長)何年か前,ある高校生から,忘れ得ぬ感想文をいただいた。面白かったとか,勉強になったという感想が多い中で,その女子高校生のそれは,絵を見る場所だと思っていた美術館で,自分の方が作品に見られているのを感じたという,大人顔負けの内容であった。だがそれ以上に私は,「いい時間でした」としめくくられていたことに感心した。その後のこと,あの地震でひと月半ほど閉館を余儀なくされたあと,所蔵品の展覧会で再開した時のこと,直後の十日間で5,000人もの方が来館され,中には,開けてくれてありがとうと声をかけて下さる方もいた。所蔵品による地味な企画,それも展覧会など憚られる状況下で宣伝などあり得ず,自粛の声すらあった。どんな展覧会かではなく,とにかく開けるの一念で再開を急いだ私には,この方たちは,展覧会を見ることよりも美術館に来たかったのだと想像された。だからこその「ありがとう」だと思えた。そして私は,展覧会というもの以前に美術館の存在についてあらためて考えさせられることになった。余所から来る私には,当時の水戸の街は,日常の時が流れず,張りつめているように映った。そこに,東北の惨状が日々深刻さを増して伝えられてくる。茨城の人たちにとっては,遠い東北で起こったことが,隣人の事,いや我が事として,自分が犠牲者であっても不思議でなく思えたに違いない。つまりは,時間という流れる「間」も,空間という隔たりの「間」も脱落,失われて,起こっていることをどう捉え,自分は何を,どうすればよいのかも分からず立ち尽くす中で,人々は日常という「間」の回復を求めて美術館に来られ,作品の前に立とうとされたのであろう。彼らが手繰るように求めていたものは,あの高校生の言う「いい時間」,そして「いい空間」といういい「間」ではなかったか。ところで,「モテル」という言葉,彼は女性にモテルという時のあの「モテル」とは,辞書では「持てる」と表記されているが,何を持てるというのか,考えたことはおありだろうか。「間が持て(た)ぬ」人はモテないように,時間・空間という「間」を持たせてくれる人がモテル人となるのではないだろうか。ただ与えられただけの時間,それをみずから使うことによって,自分のものとして真に所有される「いい時間」,「体験」以上のいい「経験」に変えてくれる装置,つまりは「間」を演出する「モテル」装置こそ美術館というものではないだろうか。平成25年度事業報告◇理事会平成25年6月6日(木)茨城県近代美術館○平成24年度事業報告及び決算報告について○平成25年度事業計画(案)及び予算(案)について◇総会平成25年6月6日(木)茨城県近代美術館○平成24年度事業報告及び決算報告について◇研修会○平成25年度事業計画(案)及び予算(案)について平成25年11月14日(木)古河歴史博物館,ホテル山水○古河歴史博物館「没後100年記念奥原晴湖展」鑑賞案内立石尚之氏古河歴史博物館学芸員○講演「奥原晴湖の学画と作画~粉本資料をめぐって~」講師平井良直氏首都大学東京オープンユニバーシティ講師古河市文化財保護審議会委員◇出版「いばらきの博物館2013」発行平成25年8月「茨城県博物館協会NEWS No38」◇ホームページ運営http://ibaraki-museums.jp/6