ブックタイトル歴史館だより No.108
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歴史館だより No.108
当館所蔵史料の紹介史料学芸部歴史資料課は,茨城県域の歴史に関わる資料の調査・収集・整理・研究・保存及び活用を基本業務としています。具体的には,古文書を中心とした史料の寄贈・寄託による受け入れや購入,マイクロフィルム撮影による写真版の作成などを行っています。ここでは,近年当館が新たに収集した資料のなかから,水戸藩における『大日本史』編纂事業に関わりの深い二つの文書群をご紹介いたします。1.横山高堅関係史料本資料群は,近世末期に水戸藩校弘道館の教授であった横山高堅が,史館あるいは私塾で使用していたと思われる『大日本史』筆写本88点から構成されます。水戸市内の個人宅に伝来したものです。横山が三ノ町に開いた私塾明強塾は,入塾者11人,通いで212人の生徒がおり,当時,漢学の私塾としては最も大きかったようです(『水戸市史』中巻(五))。水戸藩領内における私塾の存在については未解明の部分が多く,私塾経営にあたった横山高堅という人物を研究する上でも興味深い史料です。当館所蔵の『大日本史』は版本が大半であり,筆写本は数点のみです。筆写本としてある程度まとまった点数を有する本資料群は,その点でも貴重と言えるでしょう。加えて,安積澹白(覚兵衛,『水戸黄門漫遊記』の格さんのモデル)が執筆した「賛藪」(論賛)5点,水戸藩4代藩主徳川宗堯の後叙が含まれる点は,特に注目されます。「賛藪」は文化6年(1809)に全文削除が決定しているため,本筆写本はそれ以前の段階における『大日本史』のありようを伝えるものと言えます。『大日本史』の編纂過程では多くの筆写本が流布していくことになりますが,それらの伝播過程の研究はほとんど進んでいないのが現状です。本資料群は,その空白を埋める意味でも価値ある史料と考えられます。(右から順に)№1「大日本史本紀一」〔巻一~巻三〕,№80「叙後序修大日本史例」,№81「大日本史賛藪一」1