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概要

歴史館だより No.108

茨城県立歴史館の無形民俗資料記録映像について(当館の記録映像製作事業について)当館学芸課(民俗部門)では,平成7年度より「無形民俗資料記録映像」を製作し,茨城県の伝統的な民俗行事を次世代へと伝承していく一助としています。具体的には毎年,県内各地に残る民俗芸能・年中行事・伝統技能のいずれかを記録対象に選び,その行事や技能の一連の流れを簡潔な展示用映像(30分程度)と,長時間の研究用映像(60分程度。当館での研究用資料)の形で記録保存し,展示・講座等に活用しています(これまでの製作物は別紙一覧参照)。本年度は年中行事として「素鷲神社祇園祭(小川の?園)とトウヤの行事」と題し,小美玉市小川の素鵞神社を中心に行われる?園祭と,4町の氏子から選ばれて?園祭の行事を取り仕切る役職であるトウヤ(當家)のしきたりを記録しました。今回撮影した映像は,平成26年度開催予定のテーマ展「まつり―茨城の春祭・夏祭―」の期間中に当館ロビーで上映予定です。【写真】本年度製作の記録映像「素鷲神社祇園祭(小川の?園)とトウヤの行事」より(左)町内同士の口上のやり取り(右)翌年の當家を決める「おみくじ式」(無形の民俗資料と記録映像)民俗学は各地の習俗・しきたりを対象に,人々の日常生活の移り変わりを明らかにする学問であり,当館でもいわゆる民具(日常の生活用具)を中心に収集しています。しかし,民俗部門が収集するものの中でも,例えば芸能・儀礼・年中行事・工芸技術・民俗音楽などはその多くが無形の文化財であり,文字記録や物的資料を単独で収集・展示しても,その意義を十分に伝えることはできません。また,現在そうした伝承自体が,社会情勢の変化とともに消滅してしまうことも多くあるのです。人々のこうした無形の行いを民俗資料として後世へ伝え残すためには,写真や映像・音声といった視聴覚に訴える資料も含めて総合的に保管されなければ,民俗行事の全体をとらえて再現することは不可能です。例えば踊りや道具を使う時の身体の所作,楽器の演奏や人々の掛け声・唄声など,行事の中で重要な意味を持つ無形の要素は多くあります。祭礼や民俗芸能の行われる場の様子を総合的に記録し,見る人々の想像力を喚起する手段として,映像資料は極めて有効な手段なのです。1